2017年度 大学入試センター試験 「物理基礎」の講評&説


2017年01月17日更新


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2017年度 大学入試センター試験 「物理基礎」の講評&説明

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[全体講評]

 センター試験の「物理基礎」,実施3年目である。過去2年間は,かなり基本的な問題が多く,どちらかというと,簡単であった印象が強かったが,さて,今年はどうだったのだろうか。
 そのほとんどが基本的な問題ではあったものの,しっかりとその現象を理解していないと正答が導けない問題もちらほら見受けられた。まずは,第1問の問4だ。正弦波の定常波の問題であるが,あまり見かけない問題だったと思う。次に,第1問の問5の,潜熱にかかわる問題であるが,与えられたグラフの傾きから比熱の大小を導くという,これまた公式丸暗記では正答が導けない問題だった。
 第2問Bの問3のエは単位[J]を,基本単位の[kg],[m],[s]で表すという,多くの受験生があまり出会ってこなかったであろう問題も出題されており,印象に残っている。しかも,唯一の部分点が与えられた問題だ。
 全体を通してみると,今年は上に挙げたような,あまり見かけない問題が数問出ていることのほかにも,公式に当てはめるだけで正答が導かれるようないわゆる公式代入問題が減った印象がある。つまり,公式丸暗記でかつ数値を代入すれば正答を得られるようなレベルではなくなったということだろう。問題文で与えられた現象をしっかりと理解できているかが問われるようになったともいえる。


[各設問に対するコメント&説明]

第1問
 小問集合。問1から順に,発電の特徴,ばねに関する問題,電流のまわりに生じる磁場,定常波の時間変化,潜熱の問題である。計算問題というよりは,物理現象をしっかりと理解しているかが問われた問題が多かったと思う。問4の定常波の時間変化の問題はあまり見かけることがなかった問題であったし,問5のグラフの傾きから潜熱の大小を問う問題も,潜熱というものがしっかりと理解されていないと正答へたどり着けないような良問であったと思う。ただ,こういった問題は,不慣れな受験生が多く,差がついた原因になるのではないかと考えられる。
問1)いろいろな発電方法の特徴から,どの発電方法かを見抜く問題だ。物理の問題というよりも,一般常識のような印象を受けた。(a)「二酸化炭素が大量に発生」→火力発電所,(b)「熱エネルギーを経ないでエネルギーが変換」→水力発電,(c)「長期間にわたる管理の必要な廃棄物」→放射性廃棄物のことなので,原子力発電。ちなみに,選択肢は3つのうち2つが分かれば正答へたどり着ける親切設計だった。【易】
問2)フックの法則 F=kx を用いて,グラフからばね定数を求めると,k=3.0/0.3=100[N/m]。よって,x=0.20[m]のとき,ばねに蓄えられた弾性エネルギーは,U=1/2kx^2=1/2*100*0.20^2=2.0[J]。Aとわかる。【普通】
問3)直線電流のまわりにできる磁場は,右ねじの法則により求められた。ここでは,ねじの進行方向に電流の向きを合わせると,ねじを回す向きに磁場が生じることが分かるので,正答は@である。【易】
問4)正弦波の定常波の時間変化を扱った,あまり見かけない問題で差がついたのではないかと思う。図2はある時刻の定常波がかかれてり,その周期が 0.40[s] であることが与えられている。さて,求めたいこの 0.30[s] 後の媒質の変位であるが,周期で考えると 0.30/0.40=3/4周期後の変位ということになるから,点Oの変異を順に考えて行くと,0[s」で変位 -15[cm],0.10[s]後で変位 0[cm],0.20[s]後で変位 +15[cm],0.30[s]後で変位 0[cm],0.40[s]後(1周期後)に変位 -15[cm]へと移動する。よって,3/4周期後の変位は,0.30[s]後の変位 0[cm]となる。C。【やや難】
問5)潜熱というのは,物質の状態変化に必要な熱量のことで,これは,加えた熱が「分子間の結びつきを弱めたり切ったりする」(←ア)のに使われるためである。温度−加えた熱量グラフの傾きが示すのは,物質のあたたまりやすさを示しており,傾きが大きいとは,より少ない熱量ではやくあたたまることに相当するわけなので,比熱が小さいことになる。固体状態と液体状態の傾きを比較すると,液体状態のほうが傾きが緩やかなので,比熱は,固体の時よりも大きくなる→イ(よりあたたまりにくくなる)。よって,正解は@だ。ちなみに,水の比熱は,4.19[J/(g・K)]であり,氷の比熱2.09[J/(g・K)]の約2倍である。これは,常識として覚えておいたほうが良いだろう。【普通】

第2問
 Aは,縦波の弦の振動とうなりの基本問題。Bは,電気抵抗と直流回路の問題であった。

問1)弦の基本振動は,弦の長さが波長の半分であることより,λ=0.450×2=0.900[m]とわかる。これより,弦を伝わる波の速さは,波の基本式 v=fλ より,v=360×0.900=324[m/s]。また,腹が二つの定常波を作るには,波長が0.450[m]になればよいから,弦を伝わる波の速さvは同じなので,f’=v/λ’=324/0.450=720[Hz]で振動させればよいことがわかる。C。【普通】
問2)弦を張る力を強めると音が高くなるので,振動数は大きくなる。その結果,弦楽器の振動数がおんさと同じになったわけなので,もともとの360[Hz]の弦楽器の音よりもおんさのほうが音が高かったことがわかる。うなりは,1秒間あたりの振動数の差であるから,8[回]/4[秒]=2[回/s]=f-360 となるから,おんさの振動数fは,f=360+2=362[Hz]である。D。【易】

問3)今回の物理基礎のテストで唯一の部分点が与えられる問題である。まずは,ジュール熱。Q=VIt=RI^2t である。よって,ウは,公式として覚えている通りの解答になる。【易】。続いて,その単位である[J]を,基本単位の[kg],[m],[s]であらわせというのがエだ。単位[J]は,熱量の単位でもあるが,仕事の単位でもあったことを思い出そう。W=F・x(力×移動距離)だった。また,運動方程式より,F=maとかける。つまり,仕事は,W=Fx=ma・xともかけるわけだ。左辺の単位は[J]。右辺の単位は,[kg]×[m/s^2]×[m]=[kg・m^2/s^2]となる。以上より,Eを選べる。【普通】
問4)電気抵抗のある直流回路の基本問題だ。(a)は,電気抵抗の直列回路。合成抵抗は,30+10=40[Ω]。よって,オームの法則 V=RI より,I1=V/R=10/40=0.25[A]。(b)は,ちょっとしたひっかけなのだろうか? 10[Ω]の電気抵抗には電流が流れないことに気が付けば,オームの法則により,I2=V/R=10/30=0.33…≒0.33[A]と求まる。よってAが正解。(b)のような,配線はふつうしないので,演習問題などでこの手の問題をやったことがなかった受験生は,もしかしたら正答にはたどり着けなかったかもしれない。【易】

第3問
 Aは,なめらかな斜面上の物体の運動という典型問題。Bは糸でつながった2物体の基本問題。運動方程式や力学的エネルギーを用いる,頻出問題なので,全問正解したいところ。

問1)“静止させた”とあるので,力のつりあいの式を立てよう。水平方向:F=Nsinθ,垂直方向:Ncosθ=mg。これらからNを消去すれば,F=mg(sinθ/cosθ)=mgtanθ が,導かれる。力の分解になれていないと,sinとcosが逆になったりしてしまいかねない。【普通】
問2)いろいろな解き方があると思うが,ここでは,力学的エネルギー保存則を使って解いてみることにする。P点を位置エネルギーの基準とすると,[P点(はじめ)の運動エネルギー]=[Q点(あと)の運動エネルギー]+[Q点での位置エネルギー]。1/2・mv0^2=1/2mv^2+mgLsinθ。これより,v=√v0^2-2gLsinθ が導かれる。G。【普通】

問3)左向きを正として,物体AとBでそれぞれ運動方程式を立ててみよう。全体が左に等加速度aで運動しているとする。また,AとBの間の糸の張力の大きさをTとする。物体A:Ma=F-T,物体B:ma=T。これらより,加速度aを消去して整理すれば,T=(m/M+m)・F が求まる。@。【普通】
問4)等加速度運動中は,AとBをつなぐ糸はぴんと張った状態なので,AもBも同じ速度であるから,その速度をvとすると,物体Aの運動エネルギーは,EA=1/2Mv^2。物体Bの運動エネルギーは,EB=1/2mv^2。よって,EA/EB=(EA=1/2Mv^2)/(EA=1/2mv^2)=M/m。Bが正解と容易に導ける。【易】


以上。



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