2017年度 大学入試センター試験 「物理」の講評&説明


2017年02月05日更新


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2017年度 大学入試センター試験 「物理」の講評&説明

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[全体講評]

 今年度は、音の分野と原子分野が選択となり、昨年度まで選択だった熱力学の問題が必答になっていた点が大きく変化したことだ。さらに、必答の問題にも波動分野が含まれており、原子分野を選択した生徒にとっては、物理の全範囲からの出題であると感じられたに違いない。一方で、原子分野を選択しなければ、教科書の全分野をマスターしている必要はなく、従来のように、学校によっては、原子分野の扱いを最低限にとどめるような指導でも十分に対応できるということである。新課程の物理としての3年目であるが、依然として原子分野は選択問題になっているので、今後もこの傾向が続くと考えられる。ただ、個人的には、全問題必答にしていただきたいと思う。学習指導要領での選択履修を認めていないのに、大学入試センター試験では選択が可能であるというのは、まったく整合性がないと感じるからだ。
 また、昨年度復活した部分点のある問題は、今年度はなかった。一昨年度もなかったので、今後は、部分点のある問題は出題されにくいと思うのだがどうだろうか。そもそも、部分点があるということは、本来2つの問題に分けて出題するのが良いところを、全体の問題数の関係なのか、無理やりに1題にしたというような、出題者側の都合しか感じられない。なので、今後も部分点を与える問題はなしにしていただきたく思う。
 今年度の問題で、解いていて気になった問題を挙げてみる。
 第4問のA。与えられた図が円錐面であるが、問われている内容は、力学の基本問題ばかりであり、大変よく考えられた、総合問題として評価したい。
 第5問のドップラー効果の問題だが、問3では、反射板が動いている場合であり、かなりレベルが高い問題が出題されたなぁと驚かされた。選択問題では、次の第6問のほうが、はるかに易しい問題であったと思う。選択問題間の問題のレベルの差がここまで大きいのはどうなのかということが大変気にかかった。
 全体を通してみると、昨年よりも、数値計算の問題が減り、文字式で答える問題が増えたような印象があった。多くの問題が基本的で、ひねったような出題ではなく、素直な出題であり、演習問題で基本を身につけている受験生が高得点をとれるような問題であったと感じた。また、問題文中で多くのヒントも与えられており、親切すぎるなぁと感じなくもない部分もあった。


[各設問に対するコメント&説明]

第1問
 小問集合。問1は運動量保存則の基本問題、問2は力のモーメントのつり合いの基本問題、問3は電気力線の様子をかくというまったくもって基本問題、問4は凸レンズの常識の問題、問5は音の屈折現象の時に教科書のコラムなどで必ず紹介されている話題に関する問題であった。いずれも基本的な問題ばかりだが、コラムなどをしっかりと記憶していない受験生には、もしかしたら第5問で悩んだかもしれない。
問1)衝突後の小球Bの速度をvB´として、衝突前後で運動量保存則を立てると、(4.0×3.0)+(-2.0×1.0)=(4.0×1.0)+(2.0×vB´)。これを解くと、vB´=3.0[m/s]となる。正の向きに速さ3.0[m/s]ということだから、Bが正解。【易】
問2)腕の長さを支点から力の作用線上への垂線として正確に求められればたやすい。また、その際、三角形の相似を使って腕の長さを求めることになる。棒ABが静止しているので、反時計回りを正としてA点まわりの力のモーメントのつり合いの式を立てると、(−Mg×(2/3)l)+(Th)=0。よって、求めるひもの張力の大きさは、T=(2l/3h)Mgとなり、A。【普通】
問3)絶対値が等しく符号が逆の電気量をもった点電荷であるから、電気力線は正から出て負にはいるため、CかEしかない。また、Cのように、電気力線が何もないところで尖がることはありえないので、なめらかにつながっているEが正解。【易】
問4)凸レンズの性質は、次の2点。1つめは、焦点を通る光は光軸に平行に進む。2つ目は、レンズの中心を通る光は直進する。物体の上端と下端でそれぞれレンズを通る光を作図してみれば、レンズの後方に(ア)倒立実像ができる。次に、物体を光軸上でレンズから遠ざけて再び作図をしてみると、倒立実像は、レンズの後方のより(イ)レンズ側に近づくことがすぐわかる。よって、D。焦点距離が与えられてすらいないし、像までの距離などが数値で問われることもなく、まさに、サービス問題だったのではなかろうか?【易】
問5)冬には遠くの踏切の音がよく聞こえたりするが、それはなぜか・・・、というようなコラムとして、たいていどの教科書にも載っているであろう現象が問われた。一度でも読んだことがあれば原理がよくわかっていなくても解答できたのではなかろうか。これは、空気中を伝わる音速は温度が高くなると速くなることによる。V=331.5+0.6t で与えられている。そのため、温度の異なる空気層で、音は屈折する。冬に限らず、いつでも、昼間は地表付近の温度が高く、上空へ行くほど温度が低いため、地表付近の音速が大きくなるため、屈折して音は上向き進む。一方、夜間は、地表付近の温度が低く、上空へ行くほど温度が高くなるため、昼間とは逆に、音は屈折してより遠くまで届くことになる。なので、夜間には、昼間聞こえなかった遠くの踏切の音が聞こえたりするのだ。D。【易】

第2問
 Aは、極板間に金属板をはさんだコンデンサーの問題。Bは、ソレノイドコイルの電磁誘導と、ダイオードを絡ませた問題。

問1)コンデンサーの極板間の電位の変化をグラフであらわせという問題で、よく問われる典型問題だ。平行版コンデンサーの極板間の電位の変化は一様で、その傾きが電位である(E=V/d)。よって何も挟んでいない(a)は、@のように電位が変化することはすぐわかる。(b)のように、金属板を挟んだ場合は、導体である金属板は全体が同電位でるため、Bが選べる。金属板が入ったことにより、(b)の極板間隔は、2dに狭まったとも考えられる。【易〜普通】
問2)(a)のコンデンサーの静電容量を Ca=εS/3d とすると、(b)は、金属板が入ったことによって極板間隔が2dに狭まったと考えればよいから、Cb=εS/2d=3/2Ca となる。よって、蓄えられる静電エネルギーは、それぞれ、Ua=1/2CaV0^2、Ub=1/2CbV0^2=1/2・3/2CaV0^2=3/2Ua である。よって求めるエネルギーの比は、Ub/Ua=(3/2Ua)/Ua=3/2 で、Dが正解。【普通】

問3)電磁誘導が起こるのは、コイル内部の磁束密度が変化しているときだけだから、図3より、0<t<Tと、2T<t<3Tでは、電磁誘導により回路に電流が流れるが、T<t<2Tでは、磁束密度が変化しないので、回路に電流は流れない。B。【易】
問4)電磁誘導の向きと大きさは、ファラデーの電磁誘導の法則(V=-NΔφ/Δt)で求められる。ダイオードを左から右向きに電流が流れるのは、0<t<Tのときに限られることがわかるから、その時の誘導起電力(コイル両端の電圧)の大きさは、V=|-NΔφ/Δt|=N(B0-(-B0))・S/(T-0)=N・2B0S/T である。D。コイルには、コイル内部の磁束密度の変化を打ち消す向きに磁場を生じすように、自ら電流を流すように起電力を作る性質があるのだ。流れる電流の向きを間違えると、正解は導けない。【普通】

第3問
 Aは、薄膜干渉の授業のところで、くさび型の空気層の典型問題としてよく扱うまさに典型問題にして基本問題。しかも、ていねいに、どことどこで反射する光が干渉するとか、反射によって位相が変わりうることまで説明してある超親切設計。Bは、今年度必須になった熱力学の分野。単原子分子の理想気体の状態変化を扱った基本問題だった。いずれも完答したいところだ。

問1)真上から観察したときに、明線で見える条件は、その位置の空気層の厚さをyとすると、2y=(m+1/2)λ(m=0,1,2,…)である。今、真上から観察して明線で見えている位置がOからxの距離であったとすると、三角形の相似より、a/L=y/x の関係から、明線条件は、2ax/L=(m+1/2)λ となる。さて、隣り合う明線間隔 d は、m+1番目の xm+1 と、m番目の xm の差である。d=xm+1-xm=L/2a(m+3/2)λ-L/2a(m+1/2)λ=Lλ/2a。Aが正解。くさび型空気層の問題では、三角形の相似の関係を用いるのも定番である。【普通】
問2)真上から見たとき明線のあった位置の真下では、2回反射した光の位相が元に戻るため、暗線条件となっており、(ア)暗線が見える。【易】。また、くさび型の空気層を屈折率nの液体で満たすと、液体内を通る光の波長がλ/nとなるため、真下から見た隣り合う明線の間隔(これは暗線の間隔と同じで、真上から見た明線の間隔とも同じ)は、問1の結果のdの中のλをλ/nとしたものと同じになる。つまり、d´=L(λ/n)/2a=d/n。(イ)。よって正解は、Eとなる。【普通】

問3)物質量nの単原子分子理想気体の内部エネルギーは、U=3/2nRT であるから、状態Aにおける気体の内部エネルギーは、UA=3/2nRT0 である。B。【易】
問4)過程A→Bの定積変化に、ボイル・シャルルの法則を適用すると、p0V0/T0=2p0V0/TB であり、ここから、TB=2T0 と求まる。Cが正解だ。【易】
問5)過程C→Aは定圧変化なので、熱力学第一法則より、気体が吸収する熱量Qは、Q=5/2pΔV となるので、ここでは、Q=5/2p0×(V0-2V0)=-5/2p0V0 と放出熱量として求まる。さらに、状態Aでの理想気体の状態方程式より、p0V0=nRT0 だから、Q=-5/2p0V0=-5/2nRT0 である。よってEが正解。【普通】
このようなP-V図によくある、気体が外へした仕事を求めよという問題がなかったし、過程B→Cの等温変化についても何も問われていなかったのが残念だ。

第4問
 Aは、一見すると珍しい円錐面の問題のように見えるのだが、実際に問われている内容は、力学の基本問題ばかりであり、大変よく考えられた力学の総合問題であると感じた。近年まれにみる良問なのではなかろうか。Bは、運動方程式、さらに、慣性力まで問うている欲張った問題で、受験生にとっては差が開いた問題の1つだったのではと予想される。

問1)よく読めば、斜面をすべり落ちる小物体の運動に過ぎない。斜面の断面を絵にかいて、通常の斜面の角度とは違うほうの角度がθである点だけに注意すれば、解けるだろう。斜面に沿って下向きを正とすると、運動方程式は、ma=mgcosθ となるから、a=gcosθ の等加速度でlだけすべる時間を求めればよい。等価速度直線運動の公式を使えば、l=1/2gcosθ・t^2 よって、求める時間は、t=√2l/gcosθ だから、Fだ。【普通】
問2)今度は、単なる等速円運動の問題であることを見抜こう。向心力となるのは、小物体にはたらく斜面からの垂直抗力の水平成分 Ncosθ である。小物体にはたらく鉛直方向の力のつり合いの式は、Nsinθ=mg であることより、向心力の大きさは、Ncosθ=(mg/sinθ)・cosθ=mg/tanθ。よって、水平方向の等速円運動をしている小物体の運動方程式を立てると、mv0^2/a=mg/tanθ となる。求める半径aは、a=(vo^2tanθ)/g となり、Fが正解だ。【普通】
問3)なんだかかかれている絵をみると、複雑そうに見えるのだが、力学的エネルギー保存則で容易に解答が導かれる。重力による位置エネルギーの基準をにとると、点Aの全力学的エネルギー=点Bの全力学的エネルギーという式を立てるだけだ。1/2mv1^2+mgl1cosθ=1/2mv2^2+mgl2cosθ これより、v2=√v1^2+2g(l1-l2)cosθ が求めるのでCが正解。現象の本質を見抜ければ、力学的エネルギー保存則を使用するのがよいという結論に達することができたはずだ。なかなかに良問だと感じた問題だった。【普通】

問4)エレベーターが静止しているときなので、2物体の運動方程式を立てる典型的な問題である。質量Mの物体についての運動方程式は、Ma=Mg-T。質量mの物体についての運動方程式は、ma=T-mg。連立すると、T=(2Mm/M+m)g となるので、Eが正解。ちなみに、a=(M-m/M+m)g である。【易】
問5)鉛直上向きに大きさaの加速度で等価速度直線運動しているエレベーターの中では、質量Mの物体に、慣性力が鉛直下向きにMaの大きさではたらく。ばねがxだけ自然長から伸びた状態で静止していることより、力のつり合いの式を立てる。糸の張力の大きさをTとすると、質量Mの物体の力のつり合いの式は、T=Mg+Ma。ばねについては、T=kx。連立すれば、ばねの伸びは、x=M(g+a)/k と求まる。Aが正解。【普通】

第5問(選択問題)
 第6問と選択の問題。音のドップラー効果の問題。問1および問2は、基本的な問題であるが、問3では、反射板が動く場合であり、センター試験の問題としてはかなり難易度が高いと感じた。ドップラー効果の問題はいろいろな解き方があるようだが、ここでは、それぞれに波の基本式(v=fλ)を立てて、連立して解いていくという方法で説明することにする。
問1)音源についての波の基本式は、V=f1λ。観測者については、V+v=f′λ。連立すると、観測者の聞く音の振動数は、f′=(V+v/V)・f1>f1。よって、アは、f1よりも大きくなる。また、音源から観測者へ向かう音波の波長は、λ=V/f1。(←イ)。観測者の状態とは無関係に音源の状態だけで決まる。Gが正解。【易】
問2)音源が観測者へ近づく場合だ。問1と異なり、音波の波長が短くなる。音源から観測者へ向かう音波の波長は、音源の状態だけで決まるので、音源についての波の基本式を立てると、V-v=f2λなので、求める短くなった波長は、λ=(V-v)/f2。Aが正解となる。【易】
問3)反射板を動かす場合である。観測者は、音源から出た音が反射板で反射したあとの音を聞く。このように、反射板が動く場合は難易度が高い。一般的な解き方は、まず、反射板を音源にvで近づく観測者とみなして、反射板の聞く音の振動数を求める(f2とする)。次に、反射板をそのf2の振動数を出す音源とみなして、左の観測者に近づく音源として観測者の聞く音の振動数(f3)を求める。この問題では、反射板の速さvを求めるものなので、さらに難易度が上がっている。ここでは、波の基本式を立てて連立する方法で解いてみる。音源については、V=f1λ。反射板が観測者だと考えて、その聞く音の振動数をf2とすると、V+v=f2λ。次に、反射板がf2を出す音源と考えて、V-v=f2λ′(波長は短くなる)。その反射板からはね返ってきた波長λ′の音を左の観測者が聞くので、V=f3λ′。以上4本の式を連立すれば、v=(f3-f1)/(f3+f1)・V が求まる。@が正解。【やや難】

第6問(選択問題)
 第5問と選択の問題。放射線と原子核反応に関する問題。第5問の問3と比較すると、はるかに容易であり、こちらを選択するほうが個人的にはお勧めである。
問1)正しいのは、Dのみ。ほかの選択肢について簡単にコメントしておく。@電離作用は、α線もβ線もγ線ももつ。A一様な磁場に対して垂直に入射して直進するのは、電荷をもたないγ線のみ。Bβ崩壊は、原子核中の中性子が陽子に変わる崩壊であるため、原子番号は+1。陽子に変わったときに電子が飛び出す。この飛び出す電子がβ線の正体である。C自然界に存在する原子核の中には、放射性同位体も存在するので、すべてが安定であるわけではない。【易】
問2)アインシュタインによる質量とエネルギーの等価性(E=mc^2)を用いて、結合エネルギーを求める問題。原子核の質量のほうが、核子がばらばらに存在したときの合計質量よりも小さく、その質量差が、結合エネルギーであると、ご丁寧に問題文で説明してくれている親切設計の問題。質量差Δm=(ばらばらの核子の合計質量)−(原子核の質量)=(Zmp+(A-Z)mn)−M であるから、求める結合エネルギーは、ΔE=Δmc^2={[Zmp+(A-Z)mn]-M}c^2。Cである。選択肢が実に紛らわしいので要注意だ。【易】
問3)原子核反応のうちの核融合が出題された。アの原子核反応式では、この反応を知らなくても、質量数と陽子数(原子番号)の合計が、反応前後で同じになるように、選択肢の中からえらべばよい。おのずと、2・11Hのみが正解とわかる(ア)。この反応では、エネルギーが放出されるか吸収されるかであるが、太陽が輝いていることから、エネルギーが放出されているに決まっている。常識的にイは放出だろう。Bが正解。ただ、出題者は、結合エネルギーで計算させたいらしい。核反応式の左辺の結合エネルギーは、7.7+7.7=15.4[MeV]なので、左辺の原子核をばらばらにしたときには、15.4[MeV]が吸収されることがわかる。そのばらばらの状態から、右辺の原子核が生成するとき、イに入る2つの水素(11H)は、もともと陽子なので、42Heが生成するときに28.3[MeV]だけが放出される。つまり、この反応の前後では、28.3-15.4=12.9[MeV]が、エネルギーとして放出されるわけだ。【易】


以上。



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