ノーベル物理学賞に赤崎勇・天野浩・中村修二の3氏(asahi.com)
(2014年10月17日付)


 スウェーデン王立科学アカデミーは7日、今年のノーベル物理学賞を、赤崎勇・名城大教授(85)と天野浩・名古屋大教授(54)、中村修二・米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授(60)の日本の3人に贈ると発表した。赤崎さんと天野さんは青色の発光ダイオード(LED)を初めて作り、中村さんが実用化につなげた。これにより光の三原色がそろう道筋がつき、LEDの爆発的な普及につながった
 授賞理由は「明るく省エネルギーな白色光を可能にした効率的な青色発光ダイオードの発明」。研究成果を受けて、白熱電球や蛍光灯に代わるLED照明が実用化。室内照明や携帯電話、交差点の信号機のほか、省電力・長寿命の大型フルカラー・ディスプレーなどに使われている。
 LEDは電気エネルギーを光に変える半導体素子だ。フィラメントを電気で熱したときに出る光を使った白熱電球と違い、電気を直接光に変えるので効率が良く、熱による材料劣化も少なくて寿命が長い。赤、緑、青の光の三原色をLEDで実現すれば幅広い色を再現でき、用途が広がるが、青色LEDがなかなか作れず、実用化が競われていた。
 赤崎さんは名古屋大教授時代の1985年、天野さんとともに高輝度のLEDに欠かせない良質な結晶を作製。89年、窒化ガリウムの半導体で青色に光るLEDを作ることに成功した。
 中村さんは日亜化学工業(徳島県阿南市)の研究員時代の90年代前半に、製法を進化させた。
 赤崎さんは、名古屋市の名城大学で会見し「これ以上の名誉はないと思っています。支えていただいたいくつかの職場の皆さんの大きなサポートのおかげ。この場を借りてお礼申し上げたい。私は幸運で、決して私ひとりでできたわけではない。この賞に値すると思ったことはなかった」と述べた。
 中村さんは受賞決定後、「自分の発明したものが使われていることは非常にうれしい。省エネや、地球温暖化を食い止めることにも役立っていると思う」と話した。
 授賞式は12月10日にストックホルムである。賞金の800万スウェーデンクローナ(約1億2千万円)は受賞者3人で分ける。日本のノーベル賞受賞は、2012年の山中伸弥・京都大教授に続いて20、21、22人目となる。物理学賞は08年の小林誠・高エネルギー加速器研究機構特別栄誉教授と益川敏英・名古屋大素粒子宇宙起源研究機構長、南部陽一郎・米シカゴ大名誉教授(米国籍)の3人以来8、9、10人目。



 赤崎勇(あかさき・いさむ) 85歳。鹿児島県生まれ。1952年京都大理学部化学科卒、神戸工業(現富士通)入社。名古屋大助手、松下電器産業(現パナソニック)などを経て、81年名古屋大教授。89年窒化ガリウムの青色LEDを作製。92年、名城大教授。2001年、朝日賞。

 天野浩(あまの・ひろし) 54歳。静岡県浜松市生まれ。1983年名古屋大工学部電子工学科卒。大学4年から赤崎勇氏の研究室に入った。89年同大工学博士号を取得。2002年名城大理工学部教授。09年応用物理学会フェロー、10年から名古屋大大学院工学研究科教授。

 中村修二(なかむら・しゅうじ) 60歳。愛媛県生まれ。1977年徳島大工学部電子工学科卒。79年徳島大大学院修士課程修了。日亜化学工業入社。94年徳島大大学院博士号取得。99年日亜化学工業を退社。2000年米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授。01年朝日賞。



発光ダイオード(LED) 電圧をかけると光を出す半導体素子。LEDをつくるには、プラスの電気を帯びたものとマイナスの2種類の半導体が必要。材料の種類で光る色が決まる。青色LEDに使われる窒化ガリウムではプラスの半導体をつくるのが極めて難しかった。


[松野コメント]

 2014年のノーベル物理学賞に、日本人3人が選ばれた。
 青色発光ダイオードの研究に対する業績である。
 青色発光ダイオードの基礎研究で窒素ガリウムを見出した、赤崎さんと、天野さん。その物質に着目したのが赤崎さんで、実際に結晶を作ったのが天野さんだそうだ。天野さんによると、あるとき結晶を作るための装置が故障して充分な高温が得られなくなったが、低温で結晶を作ったところ、それがうまくいったのだそうな。一生懸命何かをやっていたからこその偶然であると思う。新発見はこのように偶然によって生まれていることもまた事実ではあるが、結晶を作ろうとしていなかったならきっと今日の青色発光ダイオードの発見にはいたらなかったのかもしれない。両氏とも、名古屋大学時代にこの研究をしている。
 名古屋大学は、ノーベル賞受賞率が異様に高いではないかっ!

 さて、3人目は、現在アメリカ国籍の中村さんだ。中村さんは以前からノーベル賞の候補に何度も挙がっていた。さらに、日亜化学工業で発明した特許に関する権利の訴訟などで15年ほど前にも話題を集めた人である。会社員だったのだが、研究成果に対してしっかりと権利を認めてほしいという訴訟であり、話題になった。ただ、裁判所の判決は満足いくものではなかったようで、「日本の司法は腐っている」というようなコメントを残して、アメリカへと渡った人だ。
 今回のノーベル賞で、基礎科学ではなく、中村さんは、量産化(製品化)の実現という点でノーベル賞の3人目になっている点が強調したいところだ。いいかえれば、産業分野の技術に対しての授与であり、これまでの物理学賞ではありえなかった人選である。ネット上でも、中村さんは何度もノーベル賞候補に挙がりながら授与されなかったのは、基礎科学ではないからだとする意見があったのだが、それが打ち破られた形だ。今後のノーベル物理学賞の候補には産業界の技術者も上がってくるようになるのかもしれない。
 なにはともあれ、おめでとうございます。



この記事は、無断転用が禁じられていますので、この下のURLから記事を参照してください。
http://www.asahi.com/articles/ASGB273RRGB2ULBJ068.html



トップへ
戻る


(C) Copyright 2001-2017 MATSUNO Seiji
Ads by Sitemix