ノーベル医学生理学賞に大村智氏 寄生虫薬開発に貢献(asahi.com)
(2015年10月05日付)


 スウェーデンのカロリンスカ医科大は5日、今年のノーベル医学生理学賞を大村智・北里大特別栄誉教授(80)、アイルランド出身で米ドリュー大名誉研究フェローのウィリアム・キャンベル氏(85)、中国中医科学院の屠(トゥー)ユーユー氏(84)に贈ると発表した。業績は「寄生虫による感染症とマラリアの新治療法の発見」。
 大村さんとキャンベルさんは、寄生虫病の治療薬「イベルメクチン」の開発が評価された。「河川盲目症(オンコセルカ症)」はアフリカや中南米などの熱帯地方で流行し、患者の2割が失明する恐れがあるとされる。北里大によると、イベルメクチンはこの河川盲目症の治療などで年間3億人に使われ、患者を失明から救っている。
 大村さんは北里研究所抗生物質室長時代の1974年、静岡県伊東市のゴルフ場の近くの土から、有望な物質をつくるカビに似た細菌を見つけた。他の菌とともに共同研究をしていた米製薬大手メルクに送った。メルクのキャンベルさんは動物実験で効果を試し、寄生虫が激減することを確認。大村さんが見つけた物質「エバーメクチン」の化学構造を変えてイベルメクチンを開発した。
 当初はウシやブタなど動物の治療薬として販売されたが、その後、人でも効果があり、失明を防げることが判明。世界保健機関(WHO)が河川盲目症の制圧計画を進めた。
 一方、屠さんは60〜70年代、マラリアの治療薬を探すため、伝統的な薬用植物を研究。キク科の薬草から取りだした物質「アルテミシニン」がマラリアの治療に有効であることを示した。自然科学系で中国で生まれ中国で研究を続けてきた研究者の受賞は初めて。
 二つの薬は、主にアフリカ地域で年間数億人がかかる恐れがあるこれらの病気の治療に使われ、同医科大のノーベル賞委員会は「人類に計り知れない恩恵をもたらした」とたたえた。
 大村さんは5日夜に開いた会見で「私自身は微生物がやってくれた仕事を整理しただけ。科学者は人のためにやることが大事だ、という思いでやってきた」などと喜びを語った。
 日本のノーベル賞受賞は昨年、青色発光ダイオードの発明で受賞した物理学賞の3氏に続き23人目。医学生理学賞は利根川進・マサチューセッツ工科大教授、山中伸弥・京都大教授に続いて3人目。授賞式は12月10日にストックホルムであり、賞金の800万スウェーデンクローナ(約1億1200万円)は受賞者3人で分ける。



 大村智(おおむら・さとし) 1935年山梨県生まれ、58年山梨大学学芸学部自然科学科卒、都立墨田工業高定時制教諭、63年東京理科大学大学院理学研究科修士課程修了、山梨大助手。68年薬学博士(東京大)、70年理学博士(東京理科大)。75年北里大学薬学部教授。90年北里研究所長、2007年北里大名誉教授。12年文化功労者、15年朝日賞。


[松野コメント]

 2015年のノーベル医学・生理学賞に、日本人が選ばれた。
 寄生虫病の治療薬として名高い「イベルメクチン」の開発が評価されたのが業績だ。
 NHKのニュースで受賞後に、電話で大村さんのコメント生放送されていたのだが、印象に残ったのは次の言葉だ。
 「私なんかじゃなく、微生物にノーベル賞をあげたい」
 その後、知人や家族などのいろいろなコメントや喜びの声などを連日のように放送しているが、大村さんはノーベルさんが理想とする、“人々の役に立った人に賞をあげてください”にまさに合致するような人生を送ってこられた方なんだと、よくわかった。自分も見習わなければならないなぁ・・・。
 なんでも、「イベルメクチン」の物質を作り出す微生物がゴルフ場の土壌から発見されたとかで、そこばかり報道されているような(ノーベル財団の発表時のスライドもそう)印象もぬぐえないが、
 ・どこにでも新発見の余地があること。
 ・こんなところで? というような場所でも新発見ができること。
 ・いつもビニール袋を片手に、地道にあちこちの微生物を採取していたという努力があったからこそ、この発見にいたったこと。
などを痛感させられた。
 また、若いころ、大村さんは定時制の高等学校の教諭をしていたそうで、そのときの生徒に触発され、「自分は何をやっているんだろう」と、昼間大学院で研究し、夜間は定時制の先生をつづけていたというから、何がきっかけになるかわからない、人生ってそんなものなんだなと思った次第。僕にもそんなきっかけが来るのか、もう来ているのかわからないが、毎日がんばろうと感じさせられた。おめでとうございます。



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