梶田氏、ノーベル物理学賞 ニュートリノに重さ、証明 宇宙の成立解明へ寄与(asahi.com)
(2015年10月07日付)


 スウェーデン王立科学アカデミーは6日、今年のノーベル物理学賞を、東京大宇宙線研究所長の梶田隆章教授(56)ら2氏に贈ると発表した。梶田さんは岐阜県にある装置「スーパーカミオカンデ」で素粒子ニュートリノを観測、「ニュートリノ振動」という現象を初めてとらえ、重さ(質量)がないとされていたニュートリノに重さがあることを証明した。宇宙の成り立ちや物質の起源を解明するのに大きな影響を与えた。
 日本のノーベル賞受賞は、5日に医学生理学賞が決まった大村智・北里大特別栄誉教授に続き24人目。物理学賞では、昨年の赤崎勇・名城大終身教授と天野浩・名古屋大教授、中村修二・米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授に続いて11人目となる。授賞式は12月10日にストックホルムである。賞金の800万クローナ(約1億1200万円)は受賞者2人で分ける。
 ニュートリノの研究で日本人が物理学賞を受けるのは、2002年の小柴昌俊・東京大特別栄誉教授に続いて2回目。
 ニュートリノはほかの物質とほとんど反応せず、地球をも通り抜ける。三つの型があるが、素粒子物理学の「標準理論」ではいずれも重さがないとみなされていた。もし重さがあれば、長距離を飛ぶ間に違う型に変身する「振動」という現象が起こるはずだと理論的に予想されていた。
 梶田さんは、岐阜県・神岡鉱山の地下にあるスーパーカミオカンデで、宇宙から降り注ぐ宇宙線が地球の空気にぶつかって生じる大気ニュートリノを観測。地球の裏側でできて地球を貫通してきたミュー型の大気ニュートリノの数が、神岡上空でできたものの半分であると突き止め、1998年に発表した。
 大気ニュートリノはどこでもまんべんなく発生するので、「振動」がなければ同じ数だけ観測されるはず。このデータは、地球の裏側から来る間にミュー型から他の型へ変身している決定的な証拠になり、ニュートリノに重さがあることが確実になった。
 その後、「振動」を世界中で精密に調べる実験が行われ、素粒子物理学の大きな流れをつくった。共同受賞者でカナダ・クイーンズ大名誉教授のアーサー・マクドナルド氏(72)は01年、同国にある観測装置で太陽から飛んでくる太陽ニュートリノでも「振動」があることを突き止めた。
 梶田さんは会見で「この研究は何かすぐ役に立つものではないが、人類の知の地平線を拡大するようなもの。研究者の好奇心に従ってやっている。純粋科学にスポットを当ててもらいうれしい」と話した。
 梶田さんは小柴さんの門下生。スーパーカミオカンデでの観測は、08年夏に亡くなった戸塚洋二・東京大特別栄誉教授のもとで続けられた。小柴さんの物理学賞は、前身の装置「カミオカンデ」で超新星から飛んできたニュートリノを87年に初めてとらえた功績だった。今回の受賞で、日本が長年、世界のニュートリノ研究をリードしてきたことが改めて示された。
 
■寄稿・梶田隆章さん 物質なぜ存在、迫りたい
 私たちが見つけた「ニュートリノ振動」とはどんな現象なのか。
 ニュートリノはこれ以上小さくすることのできない素粒子の一つです。かつては重さ(質量)がないとされてきました。
 もし、これを読んでいるあなたが小学生なら、こう覚えて下さい。ニュートリノは三つの型があり、飛んでいるうちに型が変わります。このことを「ニュートリノ振動」といいます。この変身がニュートリノに重さがある証拠になるのです。
 ニュートリノ振動が見つかった後、これを精密に調べる実験が世界に広がりました。その中で、ニュートリノ振動を手がかりにすれば、なぜ宇宙に物質が存在するのかという謎に迫れる可能性が出てきました。
 宇宙が誕生した時、通常の物質と一緒に、その反対の電荷を持つ反物質が同数生まれたはずです。しかし、この二つが出会うとエネルギーを出して消えてしまいます。なのに、物質だけは残って、私たちも現に存在しています。
 この理由について、物理学者は、自然界のどこかに、物質と反物質の振る舞いに違いがあるはずだと考えています。実際、クォークという素粒子では、物質と反物質にこうした違いが見つかりました。でも、クォークの分だけでは宇宙の物質量を説明できないだろうと結論されています。
 ニュートリノは特別な素粒子で、ニュートリノとその反物質の反ニュートリノでもこの違いがあります。それが宇宙の物質の起源を説明するカギではないかと考えられるようになってきました。
 これを確かめるには、さらに実験が必要です。われわれ日本の研究者は、今後もこの分野で世界の研究をリードしていきたいと考えています。



 梶田隆章(かじた・たかあき) 1959年埼玉県生まれ。81年埼玉大理学部卒、86年東京大大学院理学系研究科博士課程修了、99年東京大教授、2008年東京大宇宙線研究所長。88年朝日賞(神岡観測グループ)、99年朝日賞(スーパーカミオカンデ観測グループ)、仁科記念賞、02年パノフスキー賞、10年戸塚洋二賞、12年日本学士院賞。


[松野コメント]

 2015年のノーベル物理学賞に、日本人が選ばれた。しかも、これまで3人セット(という言い方はどうかとも思うが)での受賞が続いているなか、2人での受賞となったのも驚きだ。
 業績としては、ニュートリノに質量があることを発見したことが評価されたようだ。今から20年位前の業績である。
 ニュートリノとは、素粒子の一つであり、大変反応性がなく、多くのニュートリノが地球に降り注いでいるにもかかわらず、捕まえることができないので、長い間謎の素粒子扱いされてきた。素粒子理論では、ニュートリノに質量がないものとして論が展開されており、20年位前は、質量があったと新聞で発表されたのを当時大学生だったか大学院生だったか忘れたけど、僕も記憶に残っている大事件だ。「素粒子理論の基本部分が覆された!」とか、まだ素粒子理論もろくすっぽわからなかったのに、なぜだか興奮してたのを思い出す。
 実際に、カミオカンデやスーパーカミオカンデで発見されたのは、別にニュートリノそのものの質量ではない。検出されたニュートリノの種類とその存在比である。
 記事中にもあるように、「ニュートリノ振動」と呼ばれる現象で、べつにニュートリノがぶるぶるしているわけではなく、ニュートリノの種類が交互に入れ替わる現象だ。その結果存在比が、質量がある場合とない場合では異なることになるらしく、質量が存在しないと示さない存在比を確認したというのが実際のところである。
 NHKのニュースやこの記事のタイトルでもそうだが、「重さ」とかかれているのが気になる。
 重さではなく、質量なんです。
 重さは力[N]であり、質量は物質そのものがもつ量[kg]なんです。
 まったく別物ですが、一般の理解が得やすくするように(?)「重さ」といっているのだと考えられます。
でも、ちがうってば!
 そういえば、小学校の理科の教科書でも、質量を重さと表現しているのが現状です。
 重さと質量は別モノ。
 パブリックコメントで、それを強調したコメントを文部科学省に送ったの出すけど変わらなかった・・・。
 それはおいといて、梶田さん、おめでとうございます。NHKニュースで久々に江崎玲於奈さんを拝見しました。分野違いの人にインタビューするのは酷ですよ、NHKさん?



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